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現地レポート

未来を切り拓く化学反応 RSS

2016年3月30日 16時34分

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「東日本大震災復興支援 JX-ENEOS 第29回都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2016(以下、ジュニアオールスター2016)」は、男子が新潟県、女子が埼玉県の優勝で幕を閉じた。
彼ら、彼女らは間違いなく、この春、どの都道府県よりも強かった。しかしそれが彼らの実力かといえば、まだそうとは言い切れない。なぜなら彼らが発展途上の中学生だからだ。実力に大差はない。
それでも勝因、もしくは敗因を探れば、それは決して一つに収まらない。ファイナリストであってもなくても、また決勝トーナメントに進出しようと、予選リーグで敗退しようと、彼らは同じような思いを抱きながら、今後も続くバスケットの道を歩んでいくのだ。

10年ぶり2回目の優勝を果たした埼玉県女子

10年ぶり2回目の優勝を果たした埼玉県女子

ただ、ジュニアオールスター2016の結果として見たとき、新潟県男子と埼玉県女子は他の男女各47チームに比べて、ほんの少しだけ“チームケミストリー”がうまく昇華したといえる。ケミストリー、つまりは化学反応。チームの“まとまり”とは違う。まとまりはどのチームにも等しくあった。そのまとまりの先に生まれる、そのチームならではの形、力こそがチームケミストリーである。
選抜チームには、都道府県下のエースクラスが集まってくる。もし彼らが、たとえ個性を生かすチームスタイルだとしても、我を出し合っていたら、チームはまとまらない。だからといって周りに遠慮して、譲り合ってもチームは前進しない。

女子の埼玉県はチームが結成した当初、まとまりさえもなかったと百北 眞一コーチは振り返る。「本当にひどくて、これでどうにかできるものなのか」とさえ感じたそうだ。しかし高校生らとの強化試合を通して、徐々にチームとしてのまとまりが生まれ、多少のことでは動じない神経を、少しずつではあるが身に付けてきた。

決勝戦の後半、長崎県#12江村 優有選手の個人技で2点差に詰め寄られたときも、百北コーチは“まとまり”を進化させてきた選手たちなら「やってくれると信じていた」。もちろん大会最優秀選手賞を受賞した#15中澤 梨南選手と、#11倉持 のりか選手のツインタワーに絶対的な自信を持っていたこともあるが、今の埼玉県女子は結成当初の彼女たちではなくなっていた。

それぞれの役割を徹し、大会初優勝を遂げた新潟県男子

それぞれの役割を徹し、大会初優勝を遂げた新潟県男子

男子の新潟県を優勝に導いた堀 里也コーチは「プレイタイムの長短はありますが、それでも彼らが自分の役割を100%表現しようとする姿は際立っていた」と選手たちの姿勢を絶賛した。

粘り強く、忍耐強くプレイするのは新潟の風土に拠るもので、いわば新潟県人の彼らにとっては当たり前のこと。そこにコーチングスタッフが選手一人ひとりに期待することを説明したことで、「選手たちも混乱することなくプレイすることができました。個々の役割をわからせることで、今年の新潟県はそこで勝つんだということを理解させ、その精度を、練習を通して高めていきました」。

選手個々がその役割を理解し、徹することで、単なるまとまりではない、チームとしてより強い力が発揮できる化学反応を起こしたわけだ。

そこには練習だけでは得られない、つまりは試合を通してのみ得られるスポーツ独特の感覚もあったはずだ。勝ち上がってきたチームは勝ち上がるごとに、疲労を溜めながらも、その感覚を体得し、勝利と次への自信に変えてきた。

ジュニアオールスター2016は新潟県と埼玉県が頂点に立った。しかし本当に大切なのはこれからだ。高村 光太郎の言葉を借りれば「僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる」である。

今大会の結果に左右されず、勝っても負けても、日本のバスケット選手として、さまざまなチームメイトと化学反応を起こしながら、これからの道を切り拓いてほしい。

3日間の大会に幕を下ろしたジュニアオールスター2016

3日間の大会に幕を下ろしたジュニアオールスター2016

 

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メインコートは知っている RSS

2016年3月30日 14時35分

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「東日本大震災復興支援 JX-ENEOS 第29回 都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2016(以下、ジュニアオールスター2016)」のメインコートに立てるのは男女各2チームだけ。2日目の試合が終わったあとに作られたそれは、最終日に残ったチームにとっては目の前にあるのに、簡単に手が届かない。
大会3日目、男女の準決勝が終わり、ファイナリストが決まった。女子は長崎県と埼玉県、男子は福岡県と新潟県だ。同時にメインコートにあと一歩及ばなかったチームも、決まった。

持ち味のスピードを発揮した東京都A#8田中 ナターシャ絵里選手

持ち味のスピードを発揮した東京都A#8田中 ナターシャ絵里選手

敗れた女子の東京都Aの#8田中ナターシャ絵里選手は「決勝トーナメントを勝ち上がるにつれて緊張感も高まったし、試合が増えることで疲労も溜まって、もうすぐ足も限界というところまで来ていました。でも第4ピリオドにチームメイトと『笑顔で戦おう』と話して、最後まで全力で走りきることができました」とゲームを振り返る。

3日目の疲労はフィニッシュに表れた。それでもチームプレイを基本とする所属チームとは異なり、選手の個性を生かすプレイを根幹とする東京都Aで、彼女は最後まで自分の持ち味であるスピードを生かし続けていた。

苦しいときにチームにスイッチを入れられる愛知県#12木村 楓選手(右)

苦しいときにチームにスイッチを入れられる愛知県#12木村 楓選手(右)

男子の愛知県は新潟県に逆転負けを喫し、目の前まで見えていたメインコートを逃してしまった。ポイントガードとしてチームを引っ張った#12木村 楓選手は、大会を通した自分の出来を「これまで練習してきた以上の力を出すことができました。それは愛知県チームのコーチだけでなく、親や所属するクラブチームのコーチたちが応援をしてくれる声が聞こえたからだと思います。でも最後に負けてしまったのは、まだまだ足りないところがある証拠です」と振り返る。

大会3日目の、体力も気力もギリギリのところにあって、木村選手は最後まで足を動かし続けた。「みんなの雰囲気が悪いときに得点を取ってチームを盛り上げる」ことのできる司令塔は、#5横地 聖真選手というスーパースターをうまくコントロールしながら愛知県を準決勝にまで導いた。

多少の違いはあれ、同じような時間をかけてチームを作り上げてきた。同じように実践を重ねながら力をつけ、最終日に残った。しかし敗れた者は大会ロゴの入ったコートに、そのシューズのこすれる音を立てることができない。

しかし、だからこそメインコートは目指すべき価値がある。誰もが簡単に立てたら、おもしろくないではないか。あと一歩、二歩、三歩……今は届かなくても構わない。メンバー選考会から歯を食いしばり、汗を流し、人知れずに涙を流してきた彼ら、彼女らの日々を、東京体育館のメインコートは知っている。

メインコートは敗者の頑張りや思いも引き受ける

メインコートは敗者の頑張りや思いも引き受ける

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刺激し合いながら RSS

2016年3月29日 19時35分

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1年間、同じコーチのもとで学んだ者同士の対戦は、その一歩手前で門を閉ざされた。
「東日本大震災復興支援 JX-ENEOS 第29回 都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会2016(以下、ジュニアオールスター2016)」は、男子決勝トーナメント1回戦、栃木県は沖縄県に敗れて、大会から姿を消した。

栃木県のエース、#4星川 堅信選手はJBAが主催する「平成27年度ジュニアエリートアカデミー」に参加し、1年間、トーステン・ロイブルコーチのもとでさまざまな技術やメンタルの講習を受けてきた。

栃木県#4星川 堅信選手

栃木県#4星川 堅信選手

「ジュニアエリートアカデミーでは技術はもちろん、栄養や試合前のイメージの持ち方、緊張に陥ったときにどうするかといったことが勉強になりました。技術面では教わったことがうまく出せませんでしたが、ゲーム前の心の保ち方などはジュニアオールスター2016でも役に立ったと思います」

星川選手はジュニアエリートアカデミーのキャンプ(全6回)で毎回お行われている「1対1競争」において、3年生を含めても頂点に立つほどの実力を持っていた。しかし今大会では「目の前のディフェンスを抜いても、ヘルプディフェンスを抜くことができず、そこで出したパスもうまく通らなくて、逆に失点につながってしまった」と悔やむ。
勝てば愛知県との2回戦だった。そこには同じジュニアエリートアカデミーで競い合った横地 聖真選手がいる。

「ジュニアエリートアカデミーで自分の目標を発表する講習があったのですが、みんなは『U-16日本代表に入りたい』、『日本代表でプレイしたい』と言っていて、もちろん僕もその目標はありましたが、短期目標として『ジュニアオールスター2016で愛知戦まで勝ち上がって、横地に勝ちたい』と言ったんです。それができないのは残念だけど、横地にはぜひ沖縄を突破して、最終日まで残ってほしい」
悔しさに耐えながら、星川選手はそう口にした。

愛知県#5横地 聖真選手

愛知県#5横地 聖真選手

エールを送られた愛知県の横地選手は、2回戦の沖縄戦で前半こそ苦しんだが、チームメイトやスタッフに支えられながら、後半に気を吐き、準決勝進出の立役者となった。
彼もまたジュニアエリートアカデミーで「フィジカルが鍛えられて、跳んだときの滞空時間も長くなりました。おかげで空中で相手をかわせるプレイができるようになって、それが今、自信になっています」と1年間の手応えを語っている。

「(準々決勝で)星川とやりたかったという思いもありますけど、でもジュニアエリートアカデミーの1対1競争で僕はアイツに一度も勝ったことがなかったんです。だからここでリベンジをしたいという気持ちと、今回も負けるかなっていう気持ちの半々でした」

笑顔で語る横地は明日、愛知県として初の決勝進出をかけて新潟県と対戦する。決して1人だけで勝てるほど甘くはないが、2回戦のようにチームメイトと支え合いながら、かつジュニアエリートアカデミーで学んだすべてを出し切れば、十分にチャンスはある。

星川選手と横地選手――準決勝に進んだ東京都Bの江原 信太朗選手も同じジュニアエリートアカデミー生だが――それぞれが意識し合い、刺激を与え合いながら、今後も切磋琢磨しながら、日本の頂点、そして世界を目指す選手としてさらなる成長に期待したい。

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